正義とは…?

 日本の大学入試には、共通テストに「倫理」という単元があります。指導できる先生が少ないためか、先日の全国統一高校生テストでも選択者は少ないですが、  哲学が好きな人にとってはとても面白いですよ!政治哲学者マイケル・サンデル(ハーバード大学教授)が「道徳的に正しいとは何か」を議論する際に、具体例として提示された「トロッコ問題」があります。

 暴走したトロッコが線路Aを走ってきます。線路Aの先には5人の作業員がいますが、避難は間に合いません。あなたは、トロッコの進路を線路Bに切り替えるスイッチを見つけました。スイッチを押せば、トロッコの線路が変わり、5人の作業員は助かります。しかしスイッチで切り替えた先の線路Bには1人の作業員がいます。線路Aの5人の作業員が助かる代わりに、線路Bにいる1人の作業員がトロッコに轢かれてしまいます。この問題では、スイッチ以外でトロッコを止めたり、作業員を避難させたりという行動はできません。さて、あなたはスイッチを押しますか?スイッチを押さないでいますか?

「助かる命の数」を重視するならスイッチを押すのが正解でしょう。でも線路Bにいる人は本来なら問題なく生きられるのに、あなたの所為で巻き込まれて命を落とすことになります。それは「人間・社会が守るべき倫理原則に反する」と考えるならスイッチを押さないのが正解でしょう。この2つでも議論になりますが、新たな条件を加えます。Aの中にあなたの家族がいたら、スイッチがない代わりに恰幅のよい人があなたの前にいて、その人をAの前の線路に押し出してトロッコを止められるとしたら人間の道徳観を一定のルールで決めることの難しさが感じられますね。今日のロシア・ウクライナのような悲惨な戦争が繰り返されるのは、この難しさが原因かもしれません。さて、あなたの正義は何ですか?

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